(問) 本日の決定内容についてご説明をお願いします。
(答) 本日、臨時の金融政策決定会合を開催し、新しい資金供給手段の導入
によって、やや長めの金利のさらなる低下を促し、金融緩和の一段の強化を図
ることを全員一致で決定しました。また、次回会合までの金融市場調節方針に
ついては、「無担保コールレート・オーバーナイト物を、0.1%前後で推移
するよう促す。」ということを全員一致で決定しました。
こうした決定の背景となる経済・物価・金融情勢について説明します。
まず、景気については、わが国の景気は持ち直しているものの、設備投資や個
人消費の自律的回復力はなお弱い状況が続いており、2010 年度半ば頃までは持
ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高いと判断しました。物価面
では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、来年初にかけて下落幅をかなり
縮小させた後も物価の低下圧力は残存するとみられます。金融面をみると、企
業金融は厳しさを残しつつも改善の動きが続いています。以上の情勢判断につ
いては、前回決定会合と同じです。しかし、このところの国際金融面での動き
や、為替市場の不安定さなどが企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響
を及ぼすリスクがあり、この点には十分な注意が必要であると判断しました。
以上のような情勢判断を踏まえ、日本銀行としては、新しい資金供給手
段を導入し、実質ゼロ金利といえるきわめて低い一律固定の金利で、3か月と
いうやや長めの資金を十分潤沢かつ安定的に供給することとしました。資金供
給の規模は、当面10 兆円程度を目途にしています。こうした措置により、現
在のきわめて低い金利を維持するという姿勢を明確に示し、現在の強力な金融
緩和を一段と浸透させることを通じて、短期金融市場における長めの金利のさ
らなる低下を促すことが、現在、金融面から景気回復を支援する最も効果的な
手段であると判断しました。
要すれば、やや長めの金利の低め誘導を行うことと、それを実現するた
めに10 兆円という大量の資金供給を行うということになります。日本銀行と
しては、今回の措置が、政府の取組みとも相俟って、日本経済の回復に向けた
動きをしっかりと支援していくものと考えています。
日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的
成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識しています。その
ために、中央銀行として最大限の貢献を続けていく方針です。
なお、野田委員は、海外出張のため本日の会合を欠席されましたが、書
面にてご意見を表明されました。金融経済情勢の判断や政策対応に関する野田
委員のご意見は、先程私から申し上げたことと同趣旨のものでした。
(問) 政府では、円高などを念頭に追加の経済対策の編成を進めています。
そうした中、この時点で臨時会合を開催した理由をご説明下さい。
(答) 先程申し上げたとおり、経済・物価・金融情勢の基本判断は変わって
いません。ただ、先週来、特に先週後半以降、国際金融面でいくつかの動きが
あり、為替相場も円高方向に振れる、あるいは株価も下落するなど企業マイン
ド全体に対して悪影響を及ぼし得る動きがあったと思います。
この点は、日本銀行も政府の情勢判断と同じように判断しており、そ
うした中で金融緩和の効果を最も強力に発揮させるために、どのような方法が
効果的であるかということを考え、本日の結果に至ったということです。
(問) 実質ゼロ金利という固定金利で10 兆円程度の資金供給を行うという
ことですが、これは量的な緩和効果を狙った政策ということでよろしいので
しょうか。
(答) 今回の措置は、実質ゼロ金利で、期間3か月という長めの資金を十分
潤沢に供給するものです。日本銀行は、これまでも金融市場における需要を満
たす潤沢な資金供給を行う方針にあり、金融市場における資金需要が高まれば、
これに応じて一層潤沢に資金を供給していく方針です。今回はこうした方針の
もと、さらに新しい供給手段を作って資金供給を行うということです。金融機
関サイドにおいて、もし流動性が不足するのであれば、従来のオペと今回のオ
ペを含め、どんどん日本銀行の資金供給オペに応じて欲しいと考えています。
金融機関からみて、流動性の量が足りない、あるいは日銀からの資金
供給の量が足りない、そのために金融機関行動が制約されるという状態は、今
でもないように十分資金を供給しているつもりですが、そういうことがないよ
うに量を供給していくということです。
このように、量が制約となって金融機関行動が制約されることがない
状況をしっかり作り出すと言う意味では、広い意味での量的緩和だと考えてい
ます。先ほど質問者は「量的な緩和効果」と述べられましたが、繰り返して言
えば、量が制約とならない状況を作る、量が制約となって金融機関行動が制約
されるという状況を作らせないと言う意味でいえば、これは広い意味での量的
緩和と言ってよいと考えています。
(問) 総裁は冒頭で円高について言及されましたが、今回の金融緩和の強化
策がいわゆる円高に対して結果的にどのような対策になっていくのかについ
て解説して下さい。
(答) 為替相場それ自体についてコメントは申し上げないということはいつ
も申し上げているとおりです。それから、金融政策は様々な経済・物価・金融
情勢をみて、最終的に物価安定のもとでの持続的な成長を目的として行うもの
ですから、為替相場それ自体をターゲットにして運営していくというわけでは
ありません。
そのうえでご質問についてお答えすると、日本銀行はかねてよりきわ
めて低い金利を維持するということを景気情勢判断とともに示しています。私
どもからすればその意思は十分に伝えているつもりですが、もし、なお十分に
伝わっていないとすれば、改めてこうした方針が理解されることにより、少し
長い時間をかけて市場にも相応の影響を及ぼしていくと考えています。
(問) 量的緩和というとゼロ金利を思い出します。なぜ今回、0.1%をゼ
ロ%にしなかったのかということに関して、以前お話になったと思いますが、
もう一度ご説明をお願いします。
(答) 日本のオーバーナイト金利は現在0.1%であり、海外の主要国と比
較しても日本が一番低いということは皆さんご承知のとおりだと思います。
オーバーナイトの金利を何%にまで引下げるべきかという問題は、金融緩和を
進めている中で、最も金融緩和効果を上げるためにはどのような金利水準がよ
いかという問題です。金利の景気刺激効果については、金利引下げによるプラ
スの効果と、金融市場の機能低下によって結果として景気刺激効果が上がらな
くなってしまうというマイナスの効果、これを比較考量する必要があります。
そのうえで、どこまで下げるのが最も金融政策上有効かという問題だと思いま
す。
この点で参考になるのは、海外の主要国が今回示した判断だと思いま
す。主要国では、前回の日本の経験、それから今回の各国における金融市場あ
るいは金融機関の動きを色々と体験して、これ以上引き下げると金融緩和効果
が上がらなくなってしまうという意味で実質ゼロ金利は0.1%だという認識
ができ、それが今やグローバルスタンダードになったという感じがします。そ
の意味で実質ゼロ金利という言葉を時々使っていますが、これは、経験的な判
断の中で、日本銀行も含めて多くの国が実質ゼロ金利を0.1%だと判断する
ようになっているためです。
(問) 2点伺います。まず、10 月30 日に、社債・CPの買入れによる資金
供給を、12 月をもって止めることを決定したにもかかわらず、今回、それを復
活するようなことを決めているように感じます。これは迷走のようにみえるの
ですが、10 月30 日の引締め方向での決定が誤りであったと認めるのか伺いま
す。
次に、11 月30 日の名古屋での講演で、総裁は「緩やかなデフレにある」
と述べていますが、その10 日前の11 月20 日には「デフレには様々な定義が
ある」と述べています。日本銀行は、この10 日間にデフレの定義についてど
のように考えたのか、デフレを今どのように定義しているのか、定義を決めて
いないのかお聞きします。
(答) まず、最初の質問ですが、「迷走」であるとはまったく考えていませ
ん。金融緩和効果を上げていくうえで、最も適切な方法を追求しているという
ことです。少し具体的に申し上げると、各種時限措置の取扱いについては、金
融市場の安定を確保し、それを通じて企業金融の円滑化を支援していくという
点では、金融市場の状況変化に即応した、最も効果的な金融調節方法を採用す
ることが、いつも必要であると思っています。CP・社債の買入れに即して申
し上げると、昨年秋以降に毀損したCP・社債市場の機能回復という所期の目
的を十分に達成し、一部ではCPの金利が短期国債を下回るという逆転現象、
歪みも生じてきました。そうなると、投資家の資金を呼び込めないことになる
ので、むしろ資金の円滑な流れを実現していくうえではマイナスの効果さえ出
てくるという状況になります。従って、日本銀行が、CP・社債の買入れを完
了させる方が、より企業金融の安定・緩和効果が上がると判断したわけです。
企業金融支援特別オペを来年3月までとしたことについても、金融市場の安定
を確保するうえで、先程申し上げたような特定の市場の機能が毀損するという
状況が改善したので、より広い範囲の共通担保全てを使って資金を供給する方
が、金融市場全体の安定に貢献できる状況になったことによるものです。今回
の決定はマクロの金融緩和政策の効果を強化するために、共通担保資金供給オ
ペを一層活用していくものであり、時限措置の取扱いを決定した際の基本的な
考え方に沿った、一貫して整合的なものであると思っています。
デフレについての質問ですが、10 月末に公表した経済・物価情勢の展望
レポートおよびその後11 月に実施した金融政策決定会合でも、日本銀行の物
価に関する判断は全然変わっていません。下落幅は縮小するが物価の下落が暫
く続くという判断を、一貫して示しています。名古屋の講演では「緩やかな物
価下落が続く」というデフレの定義に従って、現在がデフレの状態にあるとい
うことを申し上げたわけです。そこに違いがあるというわけではなく、日本銀
行の考えている判断を、より誤解のない正確な形で伝える努力を、常に行って
いるということです。
(問) デフレの定義はどのように考えているのでしょうか。
(答) デフレの定義について、人々が様々な定義を使っていますから、私自
身が、こういう定義を使ってはいけないと言う立場にあるわけではありません。
ただ、コミュニケーション上、「緩やかな物価下落」という形でデフレを議論
することが多いということですと、その定義に従ってコミュニケーションする
ことが金融政策上も望ましいと思っています。
(問) デフレの定義をはっきりと語ってくれなければ、緩やかなデフレとは
どのようなものか、国民にわからないと思います。少なくとも私にはわかりま
せん。デフレについてのはっきりとした定義を語って下さい。
(答) 昨日の名古屋の講演でも「緩やかな物価下落が続く」という定義をし
たうえで、デフレについて語っているつもりです。もちろん日本銀行の説明が
全ての人に同じように理解されるかどうかは判りませんが、我々として最大限
の努力を行っています。
(問) この2週間くらい、政府の官房長官や大臣から、量的緩和という言葉
を何度も使っての催促が雄弁に語られていました。本日のこのタイミングです
と、政治的な圧力、風圧を感じての結果ではないかと思いますが、いかがでしょ
うか。
また、量的緩和という言葉で、我々はかつての当座預金をどう積んで
いくかという政策を考えますが、あえて今回の措置としたことについて説明し
て下さい。
(答) 日本銀行の金融政策は、経済全体に対して少し長い目で見ると大変大
きな影響を与えていく、それだけ責任の大きい仕事であると思っています。
従って、金融政策に対して、政府も含めて色々な方が様々な考え、思いを持つ
ことは当然だと思います。日本銀行法の下でも、政府と日本銀行が円滑な意思
疎通を図っていくうえで様々な枠組みが用意されています。日本銀行としては、
政府や様々な方々の意見も十分に理解した上で、しかし法律の規定に従って、
物価安定の下での経済の持続的成長の実現という目的をしっかり達成してい
きたいと考えています。従って、それを「風圧」と捉えるのではなく、日本銀
行の責任がそれだけ重いと捉え、その上で最終的に日本銀行がしっかり判断し
ていくことであると思っています。
量的緩和について、全ての経済用語がそうですが、事実として様々な
定義があります。FRBのバランスシートは随分拡張していますが、バーナン
キ議長やFRBは、これを量的緩和ではないと言っています。それに対し、い
やこれは量的緩和であると言っているエコノミストもいます。そのように、
様々な定義が使われています。ただ、現在FRBが否定している「量的緩和」、
つまり当座預金にターゲットを設けて量を拡大していくという意味での政策
である量的緩和について、FRBは当座預金の量は経済を刺激していくうえで
の結果に過ぎないという立場を明らかにしています。私自身、今、量的緩和に
ついての理論的論争をしたいのではなく、いずれにせよ量というものを日本銀
行は十分に出す用意はあり、もし、金融機関が日銀のオペに応じてさらに量を
調達したいということであれば、どんどん調達をして下さい、そのための枠組
みはしっかり用意しています、ということです。
(問) 先ほど平野官房長官が会見で、明日総裁と鳩山総理が会談することを
発表していたのですが、政府との意思疎通ということを考えた場合、明日に総
理と会った後に金融政策決定会合を行うわけにいかなかったのでしょうか。そ
れから、「10 兆円」という規模をどのように捉えてよいかということを説明し
てください。
(答) 政府との意思疎通についてですが、もちろん、官邸で顔を合わせての
意見交換の場は大変大事ですが、本日の金融政策決定会合も含め、様々なかた
ちでの意見交換の場はあります。したがって、私どもが知らなかったことを初
めて政府から聞くというのではなく、常々から意思疎通を行うことが大事です。
逆に言えば、会談の場に行って初めて分かるという状況というのは必ずしも好
ましくないと思います。何よりも経済は生き物、市場も生き物ですので、先週
後半以降、様々な動きがあった中で最適なタイミングを模索した結果、本日に
会合を行ったということです。
それから「10 兆円」についてですが、これは概ね10 兆円を目指すと
いうことであり、これ以上でもこれ以下でもなくきっかり10 兆円と決めてい
るのではなく、大よその目途です。概ね週1回、1回あたり8千億円という期
間3か月のオペを実行すると、大体3か月で残高が10 兆円程度に達します。
現在の金融市場の状況において十分な長めの資金を供給するうえでそれくら
いが必要であると判断しました。
もし金融市場の状況が窮屈ということであれば、それは金利に反映さ
れますので、こうしたマーケットの状況をみながら、金融機関に対して量が不
足しているという状況を作り出さないように、最終的に金融調節の現場で判断
をしていくことになります。
(問) 1年前、買切りオペや特別オペを導入した金融政策決定会合の際に、
事実上の量的緩和ではないのかという質問に対し、量的緩和とは違うという説
明があったと記憶しています。それに対し今回は「広い意味での量的緩和」で
あると説明した事との整合性について伺います。
また、日銀の基本的立場として、量的緩和では物価の押し上げ効果は
乏しいという説明も受けたことがありますが、それを踏まえて今回の施策につ
いて考え方を伺います。
そして、量的緩和と言ってしまうと、例えば供給量が落ちると引き締
めという見方もされると思いますが、あえて使う必要があったのか伺います。
(答) これは、様々なエコノミストが、様々な定義で量的緩和という経済問
題を議論していることの結果だと思います。先ほどのデフレもそうですが、量
的緩和も、エコノミスト、経済学者によって使っている定義が違っています。
今ご質問のあった昨年12 月の質疑応答について、質問の文脈を正確に覚えて
いませんが、当座預金にターゲットを設定してこれを引上げていく形での量的
緩和という意味での量的緩和ではない、と申し上げたと思います。デフレも量
的緩和もそうですが、最終的に中央銀行の総裁として大事なことは、最も大事
なメッセージを国民に対してしっかりと伝えていくということだと思います。
国民の方々は、忙しくそれぞれの仕事をしているわけで、量的緩和や従来型の
伝統的な金融政策に関して、ジャーナリストの皆さん方と同じように技術的か
つ細かい内容にまで知識を持っていると期待して情報発信をすることは、適当
ではないと思います。基本的なメッセージ、つまり国民に判りやすいメッセー
ジは何なのかということが大切です。こうしたことを踏まえて、今回の施策に
ついて言えば、量がネックになって金融機関の経済活動が阻害されないように
していくこと、これが基本的な本質だと思います。そういう意味で、厳密にあ
る立場から議論する人からみれば、議論がやや曖昧ではないかということにな
るかもしれませんが、記者の皆さんが伝えようとしている、国民に対する判り
やすい情報という観点から、「広い意味で」という言葉を使ったわけです。
また、量的緩和の効果ですが、毎回、経済の状況が違いますから、そ
の効果についての評価も分かれうると思います。前回、当座預金にターゲット
を設けるという意味での量的緩和について、金融システムの安定を維持するう
えでは大きな効果があったということはいつも申し上げているとおりです。名
古屋の講演でも少し詳しく申し上げましたが、過去の多くのデフレの経験は、
実は金融が非常に収縮し、その中で経済が収縮する、物価が収縮するというこ
とでした。そうした金融の収縮を防ぐという意味で、量をしっかり出していく
ということは、物価に対しても大きな効果があったと思っています。その上で、
短期的な意味で量の拡大そのものが経済活動を刺激する効果が大きかったか
と言うと、それは限定的だったというのが前回の評価です。米国では今回、当
座預金が増えている、当時の日本銀行とほぼ同じ程度の当座預金の超過準備の
供給を行っているという意味で、同じようなことをしています。FOMCの議
論をみると、一方のグループは、これだけの量が出ているから将来的なインフ
レが心配だという議論、つまりこれは量の拡大が物価に対して影響があるとい
うグループと、バーナンキ議長あるいはコーン副議長のように、量自体は結果
であって、これ自体で物価が上がるわけではない、つまりインフレは心配する
必要はないという2つの主張があり、この論争には決着がついていません。た
だ、論争の決着を待ってから政策を判断するわけにいきませんので、少なくと
も量について制約条件がないような状況を作り出すのは、政策当局者としての
責任ある対応であり判断だと思っています。
(問) 2点伺います。1点目として、長期国債の買切りは本日の会合で議論
の俎上に上がったのかどうか、もし上がってない場合でも、現時点でその政策
評価をどう考えるのかということをお伺いします。2点目に、状況判断で変化
した部分について国際金融情勢をあげていますが、具体的にはドバイの問題が
大きく影を落としていると思われます。今回の措置は日本銀行の単独の措置な
のか、それとももう少しグローバルな中央銀行間の意思疎通のもとにおいて行
われたのか、具体的には欧州ないしはアメリカが何らかの措置を採る可能性が
あるのか、ということについて示唆を頂ければと思います。
(答) 長期国債の買いオペについては、今回の決定会合に限らず、もちろん
毎回折に触れて議論しているテーマです。詳しい議論の内容は議事要旨で読ん
で頂きたいのですが、長期国債のオペについては、目的をどう整理するかを明
らかにした上で議論した方がよいと思います。まず、潤沢に資金を供給すると
いう目的からすると、日本銀行は既に長期国債オペを大いに活用しています。
長期国債の買い入れ額が年間21.6 兆円というのは、これは年間ベースでみて、
世界の中央銀行で現在最も大きい金額であることからわかるように、日本銀行
はこれを大いに活用しているし、円滑に調節を行っていく上で必要なものだと
思っています。金額については、金融調節を現在から将来にわたって一番円滑
に行っていくために、いくらがよいのかと判断した結果、現在の21.6 兆円と
いう金額が最適であるということになりました。いずれにせよ、量を供給する
という目的からすれば、今回導入した新しい固定金利型の共通担保オペも含め
て、十分に量を供給していくということは、これまで申し上げているとおりで
す。
それから、長期金利を維持する、あるいは財政ファイナンスのマネ
タイゼーションということがもし目的ということであれば、これは適当ではな
いと思います。FRBは3月に国債を3千億ドル買い入れることを発表しまし
たが、これは円に換算すると27 兆円であり、日本の経済規模との対比で考え
れば約9兆円の国債買いオペを行ったことに相当します。この措置は10 月末
に止めてしまいましたが、このFRBのオペについてバーナンキ議長は議会で
何度も証言しています。そこでは、自分たちのこの国債買いオペは、長期金利
の維持を目的としたものではない、あるいはマネタイゼーションを目的とした
ものではないということを非常に強調しています。その強調する姿をみると、
中央銀行、セントラルバンカーとしての判断はどこも共通していることを感じ
ます。現在、米国では財政バランスが悪化していますが、日本と比べるとストッ
クの数字ではまだ良い状況です。日本のように財政バランスの状況が米国対比
悪い国は、先程のバーナンキ議長が強調したような中央銀行としての配慮とい
うか考え方は非常に理解できると思います。いずれにせよ、長期国債の買いオ
ペについては以上のように考えています。
それから、先週来のドバイをはじめとする国際金融の動きです。これ
はドバイの特定の会社のことだけなのか、あるいはもう少し他の新興国にも同
じような話があるのかということがポイントになるわけですが、ドバイの特定
の会社だけではそれほど大きな影響ではないと思います。もちろん、この点に
ついてどういう状況にあるのかということを注意してみていく必要がありま
すが、現在 G20 という枠組みにおいて、金融システムの安定をしっかり維持
していくということは、G20 の意思とされています。それから、色々な情報交
換という意味では、これは関係する中央銀行と意見交換を行っています。ただ
今回の措置は、他の中央銀行と連携して行ったというものではなく、先程から
申し上げているようなわが国の経済金融の状況をみての判断です。
(問) 2つお伺いします。先程、当座預金の積み増しはあまり効果がなかっ
たとおっしゃいましたが、今度の措置は効果があるのでしょうか。10 兆円を0.1%で気前良く出しましたが、物価、GDPや企業金融に具体的にどのような
影響を及ぼすのか、効果を与えるのかを話してください。
次に、先ほどマネタイゼーションはいけないという話をされましたが、
今回の措置は明らかにそのような効果を持つものとみられることをどうお考
えでしょうか。政府は国債を沢山出そうとしています。今回のように0.1%
のファンディングで10 兆円の国債が買えるということになれば、当然それだ
け国債の大量発行をやりやすくなる状況が整うというのはマクロ経済学的に
みれば当たり前のことだと思います。マネタイゼーションはいけないと言って
いますがそういうことをやっていることになるのではないでしょうか。
(答) ご質問の中で、量的緩和に効果がないと私が言ったとおっしゃいまし
たが、そのようには言わなかったつもりです。金融システムの安定・維持とい
う意味では効果があった、しかし、経済活動を刺激していくという意味での効
果は限定的であったと申し上げました。前者は軽く受け止める話ではなく、中
央銀行として非常に重く受け止めるべき話だと私は思っています。
今回、0.1%という金利で3か月物の資金を供給する姿勢をしっか
り示すことは、2つの意味で効果があると思っています。第1に、日本銀行が
現在の低金利を続けていくことを通じて景気を支えていくという姿勢は、繰り
返し申し上げてはいますが、なお十分には浸透していない面があるという指摘
もあります。十分に理解されていないケースがあるとすれば、今回、固定金利、
3か月のオペを出すことは、その姿勢を明確に伝えることを通じて金利に対し
て影響があると思います。第2に、3か月の資金を出すことにより、需給的な
効果で長めの金利を下げていくということです。これはこれだけで大きな効果
があるというわけではありませんが、2つの効果が相俟って金利を下げていく
効果を期待しています。
もちろん、現在経済が直面している問題は、金利だけで解決するわけ
ではありませんから、この点のみで景気が回復すると言っているわけではあり
ません。ただ、経済が大変厳しい状況にある時に中央銀行として何ができるか
ということを自らの問題として当然考える必要があり、その際に果たし得る効
果的な貢献であると思っています。
それから、国債のマネタイゼーションについては、意図して行うこ
とはもちろん不適切ですし、今回の措置が国債のマネタイゼーションにつなが
るとはまったく思っていません。3か月、0.1%の資金で国債を買えば儲か
るといったお話がありましたが、国債については、例えば10 年国債の場合は
向こう10 年間、経済金融情勢がどのように変化するかわからないという意味
で、投資家にリスクがあります。したがって、単に参加者に3か月の資金があ
れば自動的に安心して国債に投資できるということではないと思います。
そういう意味で、中央銀行が経済の安定ではなくて財政のファイナン
スを目的として金融政策を運営するということを現に行えば、まさに懸念され
る事態になるわけですが、そういうことを行うつもりはまったくありません。
(問) 現在、為替相場が不安定になっている材料の一つとして、円の短期金
利がドルの短期金利より高いという状態があります。これはLIBOR が中心かと
思いますが、マネーが円に行きやすくなることにより、円高が進みやすくなっ
ていると思います。今回の政策は短期市場を操作するものであるので、円の金
利が下がって金利が再び逆転するという効果も一部狙ったものか教えてくだ
さい。
(答) 為替レートは様々な要因で決まるものであり、もちろん金利差だけで
決まるわけではありません。ただ、金利差という点についてお答えすると、現
在、日本の短期金利、つまりオーバーナイトから1年物までの短期金利のイー
ルドカーブを引いてみたときに、日本の金利が全体として一番低いという姿は
変わっていません。
それから、LIBOR についてのご質問がありました。多少技術的になり
ますが、LIBOR の3か月物あるいは6か月物について、一部で円の金利がドル
の金利を上回っているということが言われています。ただし、金利のデータを
提供する銀行の中には、円を母国通貨としない外国金融機関が少なからず入っ
ており、そのためにLIBOR の円金利が高止まるという動きになる面があります。
実際に日本の金融機関が円の資金調達を行う際の金利、例えばレポ金利やその
他様々なモニターやヒアリングを行っている金利は、実際にはLIBOR の円金利
よりかなり低くなっています。
色々な金利やデータがあるので、それはそれとして受け止める必要が
ありますが、全体として日本の短期金利の方が高いとは認識していません。い
ずれにせよ、今回の措置によりターム物の金利の低下が促されていくというこ
とで、今すぐではないですが、やがてそれなりの効果が出てくると思っていま
す。
(問) 今回の新しい資金供給は、どういう状況になるまで続けるのでしょう
か。政府がデフレ脱却宣言をするまでは続けるということでしょうか。
(答) 日本銀行の市場オペは、金融政策の目的を実現する上で使っていくも
のであり、その目的のためにどのようなオペを使うのが一番よいのかを考えて
いく必要があります。その意味では、基本的に金融政策の判断が最優先になる
と思います。もちろん、将来絶対にこうなるとは言えませんが、今回の措置は
金融緩和措置の一環として行っているわけですから、このオペを見直す時とい
うのは、基本的には私どもが経済・物価情勢をみて、金融政策の運営スタンス
を変えなければいけないと判断する時だと思います。ただ、オペ自体には様々
な技術的な問題もありますから、タイミングが全く一致するかどうかは分かり
ませんが、基本的にはそのように考えています。
2009-12-02